橋爪大三郎のキャリアにおける特大のハイライトであり、一般読者にその名を広く知らしめたのが、盟友である社会学者・大澤真幸との対談共著『ふしぎなキリスト教』(講談社現代新書)です。
同書は新書大賞を受賞し、新書としては異例の30万部を超える大ベストセラーを記録しました。なぜこの本が日本社会にこれほどの衝撃を与えたのでしょうか。その理由は、日本人にとって「当たり前」と見過ごされがちな西洋近代の価値観(自由、平等、人権、資本主義)が、実はキリスト教という極めて特殊で「ふしぎ」な宗教的土壌から生まれたものであることを、妥協のない対話によって解き明かしたからです。
「なぜ神は一人しかいないのか」「なぜイエスは十字架にかからねばならなかったのか」といった根源的な問いを、信者の立場ではなく徹底した社会学者・非信者の視点から分析。日本人読者が長年抱いていた疑問を氷解させました。以降、橋爪は『ふしぎな仏教』『ふしぎな一神教』などのシリーズを展開し、宗教論を現代日本人が世界のリアリティを掴むための必須教養へと押し上げました。