フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナの真実と予約の現在

フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナの真実と予約の現在

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小林幸司氏の歩みは、日本の料理界における異端であり孤高の軌跡そのものです。愛知県に生まれ、関西学院大学経済学部を中退して料理の世界に身を投じた氏は、単身イタリアへと渡航。ウンブリア州の伝説的名店「リストランテ・ヴィッサーニ」門下に入りました。世界的な鬼才ジャンフランコ・ヴィッサーニ氏のもとで、常人離れした味覚と集中力を発揮し、東洋人でありながら異例の早さでスーシェフ(副料理長)に抜擢された実績は、当時のイタリア料理界でもセンセーショナルに報じられました。

帰国後、西麻布の名店を経て、2002年にオープンさせたのが中目黒の「フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ」でした。店内は連夜、食を極めた著名人や批評家で溢れ返り、「イタリア料理の概念を変革した」と激賞されます。しかし、人気が過熱すればするほど、厨房のキャパシティとシェフ自身の美意識との間に軋轢が生じ始めました。メディア露出による商業的成功と引き換えに、自らが追い求める「一皿への完全な没入」が脅かされる危機感を抱いたとされます。

そして2011年、シェフは絶頂期にあった中目黒の店舗を突然閉じる決断を下しました。標高1,000メートル前後に位置する信州の高原地帯への移転は、単なる地方移住ではありませんでした。清冽な空気、昼夜の寒暖差が育む力強い高原野菜、そして外界の雑音を遮断した静謐な空間。中目黒から軽井沢への移転経緯は、ビジネスとしての飲食業から脱却し、料理を純粋芸術の領域へと昇華させるための不可避な選択だったのです。

田中 結衣
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田中 結衣

グルメと旅を愛するフリーライター。全国各地の隠れた魅力を独自の視点から紹介します。