湯の川温泉の開湯は、承応2年(1653年)に松前藩主・第9代の松前高広(幼名:千勝丸)が重い病にかかった際、母の清涼院が湯治をさせたところたちまち全快したという伝承に遡ります。さらに幕末の箱館戦争時には、旧幕府軍を率いた榎本武揚が負傷兵を療養させたことでも知られ、激動の歴史を見守り続けてきた由緒正しき療養泉です。
湧出する温泉の主な泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(中性〜弱アルカリ性低張性高温泉)です。無色透明でさらりとした肌触りながら、湯上がりに塩分が肌の表面に薄い皮膜を形成するため、水分の蒸発を防ぎ、抜群の保温・保湿効果を発揮します。「熱の湯」「温まりの湯」とも称され、冷え性、神経痛、筋肉痛、慢性皮膚疾患へのアプローチに優れています。
なお、島根県出雲市には「日本三美人の湯」の一つとして知られる出雲湯の川温泉が存在します。出雲の湯の川温泉が古代神話の八上姫伝説に彩られたアルカリ性単純温泉であるのに対し、北海道函館の湯の川温泉は津軽海峡の恵みを受けた塩化物泉であり、同じ名称でも歴史的背景と泉質特性が明確に異なります。双方それぞれの風土に根ざした個性を放っています。