2004年、馬渡新平は札幌市に自身の工房を構えた。28歳。独立の時だ。
しかし、彼の足は止まらない。札幌から小樽へ。そして2012年、秋田県仙北郡美郷町へ移住した。なぜ、彼はこれほどまでに移動を繰り返したのか。
答えは、土にある。美郷町で、彼は地元の土を使い始めた。刷毛目や粉引きの器。土の個性が、作品に直接反映される技法だ。土が変われば、器も変わる。彼は、その土地の声を聞いていたのだ。
3年後の2015年、馬渡は再び北海道へ戻る。今度は余市町。リンゴとワインの町として知られるこの地で、彼は決定的な素材と出会った。
野幌粘土とリンゴの灰:北海道人としての表現
野幌粘土。北海道江別市野幌地区で採れる、この土は彫刻用として知られる。馬渡はこれを陶芸に使った。さらに、余市特産のリンゴやサクランボの枝を焼いた灰を釉薬に混ぜる。
果樹の灰は、独特の色と質感を生む。化学的な釉薬では出せない、自然の揺らぎ。一つとして同じ色にならない。それが、彼の器の魅力だ。
「北海道人の素材で作る」。彼の言葉には、土地への敬意が込められている。移住を繰り返した末に、彼は自分の場所を見つけた。それが余市だった。