日本三大中華街の一つとして知られる神戸南京町。その中心部で異彩を放つ名店の歴史は、大正4年(1915年)にまで遡る。中国・天津地方の伝統的な包子(パオズ)を日本人の味覚に寄り添う形で改良し、親しみやすさを込めて「豚饅頭」と名付けたのがすべての始まりだった。当時としては斬新だったこのネーミングこそが、現在の日本の豚まん文化の礎を築いた。
一般的な肉まんとは一線を画すその特徴は、手のひらにすっぽり収まる小ぶりなサイズ感と、驚くほど弾力のある皮にある。イースト菌ではなく創業以来受け継がれてきた秘伝の麹(こうじ)を用いて発酵させた生地は、噛み締めるほどに独特の酸味と芳醇な小麦の甘みが広がる。中の餡はシンプルに豚バラ肉とネギ、そして門外不出の醤油ベースの調味料のみ。余計な野菜でかさ増しをしない潔さが、あの濃厚極まりない肉汁の泉を生み出している。