旅行情報サイトやSNSで頻繁に混同されるのが、寺院の「万燈会」と神社の「万燈籠(まんとうろう)」の違いです。漢字表記の「万灯」と「万燈」は新旧字体の差異であり本質的な意味は同じですが、寺院と神社ではその宗教的意義が根本から異なります。
寺院で行われる万燈会は、仏教の教理に基づき、「諸仏への供養」「自らの罪障消滅」「先祖や無縁仏の追悼」を目的としています。ろうそくの光は無明の闇を照らす仏の智慧を表しており、参拝者は故人の戒名や感謝の言葉を灯明に託して奉納します。
これに対し、春日大社などに代表される神社の万燈籠は、神前に明かりを捧げて「国家安泰」「家内安全」「諸願成就」を祈願する神事です。春日大社に並ぶ約3,000基の燈籠は、平安末期から室町・江戸時代にかけて貴族や武将(藤原氏、徳川家康、直江兼続など)、そして庶民が奉納した祈りの結晶です。寺院が「供養と内省」に重きを置くのに対し、神社は「感謝と祈願」の色彩が濃いという構造的違いを理解しておくと、景観の捉え方がより深まります。