アタッカー偏重と揶揄され続けてきた賞の歴史に、強烈な一石を投じたのがスペイン代表とマンチェスター・シティの心臓、ロドリの戴冠劇だった。華麗なドリブルや派手なゴールパフォーマンスに目を奪われがちな現代において、ピッチの戦術的秩序を支配し、チームを敗北から遠ざける「守備的ミッドフィールダー」の価値が正当に評価された瞬間だった。
だが、その戴冠は同時に現代のスポーツジャーナリズムが直面する激しい政治的対立をも浮き彫りにした。最有力候補と目されていたヴィニシウス・ジュニオールが選外となった報を受け、レアル・マドリードがパリでのセレモニーへの出席を直前で全面ボイコットした一件は、世界中に巨大な波紋を広げた。個人の圧倒的なひらめきか、それともコレクティブな戦術遂行能力とチームタイトルか。選考委員たちの価値観の分岐が、これほどまでに生々しく表面化した夜は過去に例を見ない。