筒井康隆の『残像に口紅を』は、単なる奇抜なアイデアの一発芸ではありません。自ら退路を断ち、母音や子音という武器を1文字ずつ捨て去りながら最後まで物語を紡ぎきった、作家という人種の狂気と執念の結晶です。
普段私たちが空気のように吸い、吐き出している無数の言葉たち。それらがもし明日から1文字ずつ消えていったら、あなたは何を想い、誰の名前を最後に呼ぶでしょうか。最後の1ページを閉じ、本を置いた瞬間、あなたの目の前に広がるいつもの部屋や交わす会話が、かつてないほど鮮烈な色彩を帯びて迫ってくるはずです。言葉の持つ魔力と残酷さをこれでもかと見せつける至高の1冊を、ぜひその手で目撃してください。 (出典: 残像 に 口紅 を(Yahoo!ニュース))