宗谷丘陵の尾根沿いに約3kmにわたって続く白い道。その眩しい白さの正体は、稚内名産であるホタテの貝殻を細かく破砕して敷き詰めたものです。人工的なアスファルトや石膏ではなく、100%天然の海産資源のリサイクルによって成り立っています。
稚内市観光交流課および地元漁業関係者の記録によると、稚内市宗谷地区は日本有数のホタテ水揚げ量を誇る一大産地です。しかし、長年にわたりホタテの加工後に残る大量の貝殻は「産業廃棄物」として扱われ、その処理費用や保管場所の確保が地域経済の大きな課題となっていました。
転機が訪れたのは2011年のことです。「宗谷丘陵フットパスコース」の整備計画が進むなか、稚内市職員と地元関係者の間で、廃棄貝殻を遊歩道に再利用する画期的なアイデアが浮上しました。実証実験を重ねた結果、破砕した貝殻には以下のような数多くの実用的メリットがあることが判明したのです。
- 歩行時のクッション性向上:土や砂利に比べて足腰への負担が少なく、フットパス(ウォーキング)愛好家に優しい踏み心地を実現。
- 雑草の抑制効果:貝殻に含まれるアルカリ成分と地表の遮光効果により、路面からの雑草繁茂を防ぎ、メンテナンスコストを削減。
- 泥濘(ぬかるみ)の防止:雨水が浸透しやすく、雨天後でも靴やタイヤが泥で汚れにくい路面環境を維持。
- 圧倒的な景観美の創出:緑の草原、オホーツクブルーの海、風力発電の風車群に鮮烈な白い直線が加わり、唯一無二の観光資源へ昇華。
当初は歩行者専用のフットパスとして整備された約1kmの区間でしたが、その圧倒的な美しさが口コミや写真投稿で広がり、2018年以降に走行区間が約3kmまで延伸されました。地域の厄介者だった廃棄物が、知恵と工夫によって日本屈指のサステナブルな観光資源へと生まれ変わったのです。