「育児書には下の前歯からと書いてあるのに、上の前歯から生えてきた」「1歳を迎えたのにまだ歯が1本もない」という相談は、小児歯科の外来でも極めて頻度が高いトピックです。ネット上では「発達の遅れではないか」「重い病気が隠れているのでは」といった根拠のない俗説が散見されますが、臨床現場の実態は大きく異なります。
まず、赤ちゃんの歯が生える順番が違う理由について、小児歯科医の臨床見解では「歯胚(歯の芽)が顎の骨の中で成熟するスピードや、歯ぐきの粘膜の厚みによる局所的な差異」が主たる要因です。例えば、上の前歯から生えたり、側切歯が先に出てきたりしても、最終的に20本の乳歯が整列すれば噛み合わせや発育に何ら障害は残りません。
次に、赤ちゃんの歯が生えてこない原因と真相についてです。歯の萌出(ほうしゅつ)時期には約半年の生理的な幅が存在します。生後10ヶ月や1歳時点で生えていなくても、歯ぐきの中で着実に歯胚が育っていれば医学的な遅延ではありません。ただし、1歳3ヶ月〜1歳6ヶ月を過ぎても最初の1本が確認できない場合は「萌出遅延」あるいは稀に「先天性欠如(先天的に歯の芽が存在しない状態)」の可能性があるため、小児歯科でのレントゲン確認が推奨されます。