過度な延命治療を行わず、自然な経過に任せて息を引き取る「平穏死」や老衰死では、身体が枯れ木のように静かに活動を停止していきます。この過程において、周囲が心配するような「飢えや渇きの苦しみ」はほとんど生じません。
人間は終末期に入ると代謝が極端に落ち、食事や水分を欲しがらなくなります。無理に点滴や胃ろうで水分を補給しないことで、かえって胸水や腹水の貯留を防ぎ、痰の絡みによる呼吸困難を回避できるという利点があります。
老衰の最期の様子を取材すると、亡くなる数日前から睡眠時間が急速に増え、声かけに対してうなずく程度になり、最後は静かに呼吸が停止するケースが大半を占めます。脱水状態が進むことで脳内の感覚が麻痺し、苦痛を感じるセンサー自体が穏やかにオフになっていくプロセスこそが、自然死が苦しまない最大の理由です。