『Doo Wop (That Thing)』の持つタイムレスなメッセージを視覚的に決定づけたのが、現在もMV史上の傑作として語り継がれるミュージックビデオです。この映像では、画面を縦に二分割する「スプリットスクリーン(画面分割)」の手法が用いられました。
画面の左半分には1967年のマンハッタン・ハーレムの街角が映し出されます。クラシックなアフロヘアやビーハイブヘアに身を包み、水玉模様のレトロなワンピースで60年代のガールズグループさながらに歌い踊るローリン・ヒルが登場します。一方の右半分には、1998年のブルックリンのストリートが描かれ、ドレッドロックスにバギージーンズ、ゴールドジュエリーを身につけた90年代ストリートカルチャー全開の彼女がラップを繰り出します。
左右の映像は完全にシンクロして進行し、過去と現在がひとつの画面の中で手を取り合ってセッションしているかのような驚きを与えます。この演出は、「時代やファッションが変わっても、男女の愛憎劇や人間関係の過ち、そして音楽が持つ本質的な力は何も変わらない」という楽曲の根源的なテーマを見事に映像化しました。1999年のMTV Video Music Awardsで最優秀ビデオ賞を含む4部門を独占したのも当然の結果でした。