物語のクライマックスにおいて、読者が目撃するのは救いのない破滅と、歪んだ願望の成就です。星矢の婚約を知った蘭花は錯乱状態に陥り、星矢の自宅へと乗り込みます。しかし、星矢から冷酷に拒絶され、決定的な別れを告げられた蘭花は完全に精神の均衡を崩してしまいます。
この悲劇的な崩壊の背後で糸を引いていたのは、他ならぬ留利絵でした。留利絵は蘭花を救うためではなく、「蘭花が完全に自分だけを頼るようにするため」に動いていました。星矢の浮気や不誠実な言動をあらかじめ察知しながら、あえて蘭花に小出しにして精神的ショックを与え、星矢の婚約者に関する情報を意図的に蘭花へ流して破滅的な衝突を起こさせたのです。
すべてを失い、廃人のようになってしまった蘭花。その蘭花の手を握りしめ、優しく微笑む留利絵。蘭花から美貌と自信を奪い去り、世界から孤立させたうえで「自分がいなければ何もできない存在」へと仕立て上げることこそが、留利絵の真の狙いでした。結末において蘭花は、自分を地獄に突き落とした張本人である留利絵にすがりつき、留利絵は至上の幸福感とともに蘭花を抱きしめます。二人が辿り着いたのは、友情の皮を被った絶対的な捕食と共依存の完成でした。