石上純也のキャリアを語るうえで、妹島和世が率いる設計組織、そして妹島と西沢立衛によるユニット「SANAA」での濃密な時間は外せない。2000年代初頭のSANAAといえば、金沢21世紀美術館をはじめ、空間のヒエラルキーを解体し、軽やかさと透過性を極限まで追求していた伝説的な時代だ。若き日の石上はその中枢でプロジェクトに携わり、建築というメディアが持つ極限の可能性を肌で吸収した。
2004年に独立を果たし「junya.ishigami+associates」を設立した石上は、師たちの遺伝子を受け継ぎながらも、まったく異なるベクトルへと舵を切る。SANAAの透明性がどこか都市的で洗練された抽象性を持つとすれば、石上の関心は「原初的な自然」そのものへと向かっていた。植物、雲、水、山脈――幾何学の支配から建築を解き放ち、自然現象そのものを構造として立ち上げる試み。ここから、従来の建築・都市設計の文法を根底から書き換える孤高の探求が始まった。