本展は、高畑勲氏の半世紀以上にわたるキャリアを年代順に追体験できる構成となっています。東京大学仏文科を卒業後、1959年に東映動画(現・東映アニメーション)へ入社した高畑氏は、1968年の映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』で長編監督デビューを果たしました。集団制作システムを導入し、作品テーマに社会的な深みを与えたこの作品は、日本アニメの歴史を大きく前進させたエポックメイキングとして知られています。
1970年代に入ると、テレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』(1974年)や『母をたずねて三千里』(1976年)、『赤毛のアン』(1979年)を次々と手がけました。とりわけ『ハイジ』では、徹底したスイス現地ロケハンに基づき、日常生活の丁寧な描写や食事シーンのシズル感、光あふれる自然の美しさを導入。この時に確立された「レイアウトシステム」は、後のスタジオジブリ作品の強固な基盤となりました。
1985年のスタジオジブリ設立以降は、『おもひでぽろぽろ』(1991年)、『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)、『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)と、作品ごとに全く異なる実験的な技法に挑戦。日本のアニメーションが持ちうる表現の可能性を誰よりも果敢に拡張し続けた軌跡が、膨大な資料とともに総覧できます。