敷地の一角に足を踏み入れると、木漏れ日の中に重厚な石碑が佇んでいる。ここは伊豆を舞台にした数多くの傑作が生まれた文学の聖地。川端康成が若き日に歩いた足跡が、今も木々のざわめきの中に色濃く残る。
敷地内には川端康成の文学碑がひっそりと設置されており、訪れる者を昭和初期の抒情的な世界へと誘う。さらに、人間の業と愛憎を冷徹に描いた松本清張の足跡もこの地に刻まれている。歌謡曲として国民的な記憶となった石川さゆりの名曲の情景も重なり、世代を超えた旅情を掻き立ててやまない。
木立に囲まれた遊歩道をゆっくりと歩けば、森全体がひとつの巨大な書架のように感じられてくる。活字でしか知らなかった物語の舞台に自らの足で立つ感覚は、デジタル画面越しでは決して味わえない知的な贅沢だ。