八角信芳(第61代横綱 北勝海)という男の原点は、愚直なまでの「押し相撲」にある。現役時代、小柄な体躯でありながら圧倒的な立ち合いの鋭さと不屈の闘志で昭和から平成の土俵を駆け抜けた。九重部屋の黄金期を支えた猛者としての血脈は、理事長となった今も色あせていない。
自身の看板である八角部屋の指導現場では、常に弟子たちと同じ目線で汗を流す。隠岐の海や北勝富士といった実力派を育て上げた手腕は、言葉ではなく背中で語る現場主義の賜物だ。組織のトップに君臨しながらも、土俵の砂の匂いを決して忘れない。この泥臭い現場感覚こそが、歴代の理事長たちとは一線を画す彼の強みとなっている。