意識を取り戻したからといって、苦難が終わったわけではない。むしろ、そこから本当の意味での「長い戦い」が幕を開けた。言葉をうまく発せない言語障害や、思い通りに動かない身体とのリハビリは、壮絶を極めた。
一歩を踏み出すこと、一音を発することに莫大なエネルギーを費やす妻を、源氏は焦らず見守り続けた。専門の医療スタッフやヘルパーと連携を密にし、自宅のバリアフリー化を進めながら、生活の基盤を作り直した。世間が称賛する「美談」の裏側には、介護にまつわる疲弊や将来への不安といった生々しい現実が常に同居していた。