乾麺の調理に関しては、長年まことしやかに語り継がれているいくつかの都市伝説が存在します。その代表例が「うどんは消化が良いから、いくら食べても太らない」「吹きこぼれそうになったら差し水(びっくり水)をすれば美味しく茹で上がる」という俗説です。
まず消化の良さについて、確かにうどんはうどん粉のデンプンが細かく、胃腸への負担が少ない食品です。しかし、消化吸収のスピードが速いということは、食後の血糖値の上昇(GI値)が急激であることを意味します。血糖値がスパイクを起こせばインスリンが大量に分泌され、消費されなかった余剰エネルギーは体脂肪として蓄積されやすくなります。「ヘルシーだから」と油断して乾麺150g(茹で上がり約450g)を一気に啜る食習慣は、むしろ体重増加を招く危険因子となります。
もう一つの大きな誤解が「差し水」です。昔の家庭用コンロでは火加減の微調整が難しかったため、吹きこぼれ防止策として冷水を注ぐ手法が定着しました。しかし現代の調理科学において、激しく沸騰している鍋に冷水を注ぐ行為は麺のコシを損なう最大の悪手とされています。急激に湯の温度が下がることで麺の外側と中心部の加熱グラデーションが乱れ、表面がふやけて芯ばかりが残る「煮えムラ」が発生するためです。吹きこぼれを防ぐ正解は、差し水ではなく「火力をわずかに落とし、対流が止まらない微沸騰状態を維持すること」です。