本作を語る上で欠かせないもう一つの主役が、美幸が丹精込めて改造を施した墨東署交通課のミニパト、初代ホンダ・トゥデイ(JW1型ベース)です。本来は丸目ライトが愛らしい550ccの軽自動車ですが、美幸の手によってモンスターマシンへと変貌を遂げています。
エンジンは後輪駆動や4WD化を想定した大胆な載せ替えが行われ、DOHCターボ化、特注サスペンション、超扁平タイヤの装着、果ては緊急追跡用のNOS(ナイトラス・オキサイド・システム)まで搭載。追跡時にボンネットのエアスクープから吸気音を響かせ、普通乗用車を軽々と追い詰める描写は、車好きを歓喜させました。さらにラゲッジスペースには、夏実の愛機である折りたたみ式原動機付自転車「ホンダ・モトコンポ」が車載され、狭隘な路地での犯人制圧に連携して投入されるギミックは、当時のミリタリー・メカギークの間でも語り草となっています。
作者である藤島康介は、バイクや自動車に対する造詣が極めて深いことで知られます。自著や当時の開発インタビューにおいて「機械のパーツひとつひとつのボルトやサスペンションのストロークを嘘偽りなく描くことで、キャラクターの息遣いにリアリティが宿る」と語っていた通り、そのリアリズムへの執念が作画スタジオにも伝播し、手描きセル画時代における最高のカーアクション表現を生み出す原動力となりました。