東宝配給で映画化された劇場版シリーズは、テレビ版のポップなテイストから一転、人間の暗部を容赦なく抉り出す重厚なドラマへと舵を切った。記念すべき映画第1作『容疑者Xの献身』において、薫は湯川と天才数学者・石神との哀しき頭脳戦を間近で見守る狂言回しであり、同時に観客の感情を一身に背負う存在だった。
そして年月を経て公開された『沈黙のパレード』では、湯川と薫の立ち位置はより対等なパートナーシップへと変化を遂げた。かつてのように教えを乞う刑事ではなく、沈黙を貫く容疑者たちに立ち向かうプロフェッショナルとして並び立つ二人。東宝映画ならではのスケール感の中で描かれた薫の成熟は、シリーズを長年見守ってきた観客の心を深く揺さぶった。