厚生労働省および国立感染症研究所がまとめた疫学データによると、ノロウイルスによる集団食中毒は、冬季における感染性胃腸炎の主要な原因であり続けている。ノロウイルスの恐るべき特徴は、その桁外れの感染力にある。わずか10個から100個程度の微小なウイルス粒子が体内に入るだけで、成人であっても容易に発症に至る。
牡蠣は海水を1日に何百リットルも吸い込み、エラでプランクトンを濾過して栄養を摂取している。その過程で海水中に漂うウイルスを中腸腺(内臓部分)に濃縮して蓄積してしまう。牡蠣自身が病気になるわけではないため、見た目や匂い、味に一切の変化は現れない。これが経口感染の大きな落とし穴となっている。
さらに見過ごせないのは、二次感染の拡大だ。感染した人が十分に手を洗わずに触れたドアノブや食器、あるいは乾燥した嘔吐物から空気中に舞い上がったウイルス粒子を吸い込むことによって、牡蠣を直接食べていない同居家族へ瞬く間に感染が広がっていく。家庭内パンデミックを防ぐには、個人の食事管理にとどまらない環境衛生の徹底が求められる。