背景の描き込みと同じくらい重要なのが、そこに佇む人物の圧倒的な存在感だ。現代のグラフィックシーンで求められるのは、ステレオタイプな悪党ではない。暗闇の中で葛藤し、己の美学を貫く人間味あふれる男たちのポートレートである。ここで効果を発揮するのが、光と陰を極端に強調するネオノワール的な表現技法だ。
顔の半分を濃い影で覆い、瞳にだけかすかな光を宿らせる。あるいは、使い古された高級スーツの仕立ての良さと、頬に残る生の傷跡とのコントラストを強調する。セリフがなくとも、その背中や手元の仕草だけで背景にあるドラマを感じさせる。鋭い眼光や指先のスモーキーな演出に至るまで、細部への徹底的なこだわりが、一枚の絵に命を吹き込む。