かつて効率こそが正義だった。しかし、タイパ至上主義の反動は、私たちが想像するよりも早く、そして深く人々の精神を蝕んでいたのかもしれない。ボタン一つでご飯が炊け、缶のまま酒が飲める時代に、あえて手間をかける。この逆説的な贅沢が、今の若者にとっての最大の癒やしとなっている。
単なるノスタルジーではない。自分の手で酒を注ぎ、米をよそうという一連の動作が、脳をリラックスさせる効果があることが最新の心理学研究でも指摘され始めている。自動化された日常の中で、私たちは「自分で何かをコントロールしている」という感覚を飢えるように求めているのだ。