選挙でマークシートが採用されない最大の障壁となっているのが、過密な選挙日程と公職選挙法第46条に規定された「自書式投票」のルールです。日本の選挙では、公認争いや政治的駆け引きの結果、立候補の届出が締め切られるのは選挙期日の告示日夕方(17時)となります。
問題は、その翌日の朝から期日前投票が即座にスタートする点です。仮にマークシート方式を採用する場合、確定したすべての候補者名簿を版下に組み込み、誤字脱字がないか厳密に校正し、全国数万カ所の投票所に配備する膨大な枚数を印刷・配送しなければなりません。告示日の17時から翌朝8時30分までのわずか十数時間で、数百万人規模の用紙を印刷・仕分け・配送することは物流・印刷工場の物理的キャパシティから見ても不可能です。
急な衆議院の解散劇が起きた場合、その過酷さはさらに跳ね上がります。一方で現行の手書き投票であれば、候補者名があらかじめ印字されていない「共通の無地用紙」を使用できるため、選挙日程が決まった段階で事前に全国へ用紙を納品しておくことができます。この印刷と配送のタイムラグを回避できる柔軟性こそが、手書き投票が選ばれ続ける構造的な理由です。