日本の昆虫界の象徴であるヤマトカブトムシ(Trypoxylus dichotomus)の体内では、複雑な消化酵素と免疫系が常に働いている。昆虫生態学や飼育・病態生理学の最前線で活動する研究者たちも、この体液分泌・消化液吐出現象の解明に全力を注いできた。
元国立科学博物館研究員で日本昆虫学会の重鎮でもある岡島秀樹(昆虫学者)らの知見や、近年発表された『日本産カブトムシの生態と病態生理に関する研究報告』によれば、カブトムシの中腸壁は過度な高温環境や劣化したエサの摂取により容易に炎症を起こす。消化液が逆流して白濁排液となるプロセスは、まさに個体が生命維持の限界線に立たされている証拠なのだ。