犬が仰向けで眠る理由は、精神面だけにとどまりません。生理学的な観点から極めて重要なのが、「犬の体温調節と暑さ対策」という物理的欲求です。
人間は全身のエクリン汗腺から汗をかいて気化熱で体温を下げることができますが、犬の汗腺は肉球周辺などごく一部に限られます。そのため、パンティング(浅く速い呼吸)による水分蒸発が主な体温調節手段となりますが、それと並んで重要な役割を果たすのが「被毛の薄い腹部からの放熱」です。
臨床獣医師の指摘によると、犬の腹部は背中側に比べて被毛の密度が低く、皮膚のすぐ下に血管が通っています。外気温が上昇したり、体内に熱がこもったりした際、四肢を開いてお腹を外気に晒すことで、効率よく空気へ熱を逃がそうとします。夏場にフローリングや冷感マットの上でひっくり返るように寝ている場合、安心していると同時に「体が熱いので冷やしたい」という生理的サインを出していると解釈するのが自然です。
特に短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)や被毛の厚いダブルコートの犬種(シベリアンハスキー、ポメラニアンなど)は熱中症リスクが高いため、室温25〜26℃、湿度50%前後を目安に室内環境を整える配慮が欠かせません。