現場のリアルな厳格化とは対照的に、メディア空間におけるアヤソフィアへの関心はかつてない高まりを見せている。ダン・ブラウンのベストセラーを映画化した映画『インフェルノ』では、クライマックスの舞台としてこの聖堂の地下水脈や建築構造がサスペンスフルに描かれ、世界的な再注目を促す契機となった。
また、Netflixの人気ドキュドラマ『オスマン帝国: 皇帝たちの夜明け』のヒットは、メフメト2世による征服劇と大聖堂のモスク化のドラマを若い世代へ鮮烈に印象づけた。映像作品が描く壮大な叙事詩は、現地を訪れる旅人の巡礼欲を強く刺激し続けている。
物理的な立ち入り制限が進む一方で、デジタル空間でのアクセスは劇的な進化を遂げた。歴史・文化遺産ドキュメンタリーによる詳細な3Dレーザースキャン調査や、Google Arts & Cultureなどの高精細デジタルアーカイブを通じて、肉眼では捉えきれないドーム上部の微細なモザイクや碑文が画面越しに克明に観察できる。物理的な制限が、逆説的にデジタルアーカイブの価値を押し上げているのだ。