霧島の湯を語るうえで、歴史の英傑たちとの深い関わりを無視することはできない。幕末の志士・坂本龍馬は、寺田屋事件で負った刀傷を癒やすため、妻のお龍とともにこの地を訪れた。これが日本初の「新婚旅行」と伝えられている。
龍馬が長期間滞在し、傷を癒やした塩浸温泉には、今も当時の面影が残る。湯船に身を沈め、彼が見上げたであろう霧島の空を眺めると、悠久の時を超えて歴史のドラマが眼前に立ち現れるかのようだ。
一方、薩摩の英雄である西郷隆盛もまた、霧島の湯に深く魅了された一人である。日当山温泉や栗野岳温泉に長期間滞在し、狩猟をしながら心身を休めたという記録が残る。西郷が愛したとされる湯は、飾らない素朴さと確かな湯もちの良さが魅力だ。
古くは『古事記』の天孫降臨神話にまで遡る霧島神宮の参拝と合わせ、偉人たちが歩んだ湯巡りの道をたどる旅は、訪れる者の知的好奇心と身体の双方を満たしてくれる。