千日回峰行が「死の行」と呼ばれる最大の所以が、700日を満行した者だけに許される「堂入り(どういり)」の儀礼です。無動寺谷の明王堂に籠もり、足掛け9日間(約170時間以上)にわたって「断食・断水・不眠・不休」を貫き、不動明王と一体になるための真言を十万遍唱え続けます。
この間、一切の飲食が禁じられるため、堂入り中の排泄現象は劇的な変化を遂げます。堂入り初日から2日目にかけては体内に残った微量の老廃物が排出されるものの、3日目を過ぎる頃には尿の生成が極端に減少し、濃褐色に変色した後にほぼ完全に出なくなります。便に関しても、固形物を一切摂取しないため初期の段階で腸内が空となり、排便そのものが起こらなくなります。
人間の身体は水分が入らなければ汗や呼気から水分を失い続け、激しい脱水状態に陥ります。堂入り中の行者は1日1回だけ口をすすぐ「うがい」が許されますが、水分を一滴も飲み込まないよう、吐き出した水の量を厳密に計量して確認されます。体内の水分と代謝物が極限まで枯渇するため、「トイレに行く必要性そのものが生物学的に消失する」というのが、堂入りにおける驚くべき生理現象の実態です。