視覚科学の歴史を紐解くと、瞳のサイズが人間関係に与える影響についての研究は実に深い。かつて心理学者のエドワード・ヘスが行った有名な実験では、被験者にまったく同じ人物の写真を見せ、瞳の大きさだけを変えた比較検証が行われた。結果は明白だった。瞳孔が開いている写真のほうが、圧倒的に「魅力論的価値が高い」と評価されたのである。
人間は興味や興奮、好意を感じたとき、自律神経の働きによって瞳孔散大が起こる。この生理現象は偽ることができない。つまり、瞳孔が大きく開いた瞳を見た脳は、「この人は自分に関心を持っている」と勘違いし、ミラー効果のように相手に惹きつけられていくのだ。
また、日本人の瞳を形成する黒目部分は、厳密には中央の瞳孔とそれを囲む虹彩から成り立っている。虹彩の境界線がくっきりと強調されることで、視覚的なコントラストが生まれ、目の動きそのものが雄弁な言語として相手の脳に刻み込まれる。