大阪難波の名店「元祖とんかつカレーカツヤ」は一体なぜ多くの人を魅了し続けるのか。その答えは、一口運んだ瞬間に舌の上で炸裂する「未体験の味覚構造」にあります。
日本のカレーライスの主流である小麦粉でしっかりととろみをつけた濃厚な大衆カレーや、昨今流行のスパイスが前面に出たスパイスカレーを想像してスプーンを口に運ぶと、誰もが良い意味で予想を激しく裏切られます。カツヤのカレーソースの根幹にあるのは、洋食のデミグラスソースにも通じる丁寧なフォン(出汁)の抽出です。牛骨や香味野菜を徹底的に煮出し、大量のタマネギとリンゴなどのフルーツを惜しみなく投入して数日間じっくりと熟成させたルーは、さらりとした質感の中に凝縮された旨みを秘めています。
ファーストインプレッションは、驚くほど爽やかでフルーティーな甘みと、心地よい酸味。その直後、奥底からじわじわと上質なスパイスの辛みが追いかけてきて、喉を通る頃には心地よい温かみへと変わります。この多層的なグラデーションこそが、カツヤが「唯一無二」と呼ばれる最大の理由です。
主役のとんかつも見事な計算の上に成り立っています。注文が入るごとに衣をまぶし、熟練の油温コントロールで揚げられるかつは、衣が軽やかでサクサクとした歯切れの良さを誇ります。肉自体の脂の甘みと赤身の旨みが、フルーティーで酸味の効いたルーと合流した瞬間、油っぽさは見事に中和され、スプーンを口へ運ぶスピードが加速していきます。一般的なカツカレーで感じがちな食後の胃もたれが極めて少ないことも、世代を超えて愛され続ける決定的な要因です。