奈良の交通網を語る上で欠かせない名物が、大和八木駅から和歌山県の新宮駅までを結ぶ「八木新宮特急バス」だ。高速道路を使わない一般道の路線バスとしては日本一の走行距離(166.9km)と停留所数(168カ所)を誇り、所要時間は約6時間半に及ぶ。単なる移動手段を超えた絶景ルートとして、国内外の鉄道・バスファンから絶大な人気を集めている。
この路線は観光資源としての側面を持つと同時に、十津川村をはじめとする紀伊山地の山間集落をつなぐ「地域公共交通」の要でもある。過疎化や高齢化が進む地域において、医療施設や買い物拠点へのアクセスを保障するインフラとして機能している。都市部の大型観光バス事業や幹線路線で得た収益を維持管理へ還元するエコシステムは、全国の地方交通が直面する課題に対する示唆に富んでいる。