国家規模の大事業であった「2026年度新日本銀行券改刷プロジェクト」において、紙幣の寸法を変更しなかったことは極めて合理的な経済判断でもあった。もし千円札のサイズをわずか数ミリでも変更していれば、全国に数十万台存在する自動販売機、駅の券売機、コンビニのATM、飲食店のお会計レジなどの機械センサーを全面改修・交換する必要が生じ、社会全体で莫大なコストが発生していたはずだ。
日本の貨幣・印刷産業は、世界最高峰の偽造防止技術を誇る。新千円券には、世界初となる「3Dホログラム技術」が導入され、見る角度によって北里柴三郎の肖像が立体的に回転して見える仕組みが組み込まれた。紙の厚みや手触り、水引模様のすき入れ(すかし)の精度を高めつつ、サイズ規格の完全互換を保つ開発陣の緻密な工夫には目を見張るものがある。