月が離れつつあるという事実を、人類はいかにしてこれほど精密に突き止めたのだろうか。その鍵は、半世紀以上前におこなわれた歴史的ミッションにまで遡る。1969年、歴史にその名を刻んだアポロ11号計画において、宇宙飛行士ニール・アームストロングらは月面に小さな石英ガラス製のコーナーキューブ鏡陣列を設置した。これが現在も現役で運用されている月レーザー測距実験(Lunar Laser Ranging)の始まりである。
地球上の天文台から月面の反射鏡に向けて強力なレーザー光線を照射し、それが往復して戻ってくるまでの時間差を計測する。光速は不変であるため、往復時間を測定すれば、地球と月との間隔をわずか数ミリメートルの誤差で割り出すことができる。NASA(アメリカ航空宇宙局)をはじめとする国際研究チームは、この実験を数十年にわたって継続。膨大な観測データの蓄積によって、年3.8cmという離脱速度が科学的な事実として証明されたのである。