今日、コミックマーケットが誇る巨大な経済波及効果と文化的価値は、一朝一夕に築かれたものではない。草創期からイベントの自由な表現空間を守り抜き、組織の基礎を固めた米澤嘉博氏のビジョン。そして、時代の変革期において現場の指揮を執り、安全かつ持続可能な運営体制を確立した筆谷芳行氏をはじめとするコミックマーケット準備会の地道な努力が、その根底にある。
個人の創作意欲から生まれた小さなマーケットは、やがて同人誌出版業界を巻き込み、印刷・物流・観光をも動かす巨大な産業へと発展した。そして、この何十万人もの移動を滞りなく処理するために、東京都交通局が総力を挙げてダイヤを編成し、都営バスを縦横無尽に走らせる。コミケという現象は、表現者と参加者、そして都市インフラが見事な協奏曲を奏でることで初めて成り立っている。