階段を一歩ずつ下り、坑内へ足を踏み入れた瞬間に広がるのは、外の喧騒から完全に遮断された静寂と冷気です。大谷石地下採掘場跡の広さは約2万平方メートル(野球場がすっぽり入る広さ)、深さは平均約30メートル、最深部では約60メートルにも達します。長年にわたり約1,000万本もの石材が切り出された結果、整然とした柱と巨大な空間が残され、あたかもピラミッドの内部や地下大聖堂のような荘厳な景観が形成されました。
現場を訪れた観光客の目をまず奪うのが、壁面に刻まれた無数の削り痕です。手掘り採掘が行われていた昭和初期までの「ツルハシの斜め縞模様」と、昭和30年代以降に導入された機械化による「平滑な水平ライン」が混在しており、壁面そのものが日本の近代産業の歩みを物語る巨大な歴史絵巻となっています。
さらに見逃せないのが、計算されたライトアップ演出と空間アートの融合です。薄暗い坑内に設置されたスポットライトが石肌の凹凸を立体的に浮かび上がらせ、假屋崎省吾氏の手掛けた華やかなオブジェをはじめとする現代アートが幻想的なコントラストを描き出します。また、石材が音を適度に吸収・反響させる独特の音響構造を持つことから、定期的にクラシックコンサートや特別展示が開催されるなど、五感で楽しむ芸術空間としての評価を確立しています。