植物史の古文書や分類学のデータを紐解くと、現代の認識とは逆の意外な事実が浮かび上がる。今日でこそキンモクセイの方が圧倒的な知名度を誇るが、分類学上、キンモクセイ(学名:Osmanthus fragrans var. aurantiacus)はギンモクセイ(学名:Osmanthus fragrans)の変種とされているのだ。
中国大陸を原産とするモクセイ属の樹木は、江戸時代に日本へ渡来したとされる。当時の文献には「銀木犀」の記述が古くから見られ、庭園樹や神社仏閣の境内を彩る高貴な木として大切に育てられていた。その後、より香りが強く華やかなオレンジ色の変種である「金木犀」が普及すると、その圧倒的な存在感から爆発的な人気を博し、日本全国の公園や一般家庭の庭木として定着していった。
「金」と「銀」という対比の名称は、中国名である「丹桂(金木犀)」と「銀桂(銀木犀)」に由来する。名前に「金」が冠されたことで主役の座を射止めたキンモクセイだが、植物の進化の系譜においては、白く慎ましいギンモクセイこそがすべての母体であったという歴史のロマンは深い。