ロックミュージシャンの内田裕也との結婚生活は、まさに暴風雨の連続だった。警察沙汰や家宅侵入、一方的な離婚届の提出とそれに対する無効訴訟。常識の枠組みでは到底推し量れないエピソードの数々に、当時のワイドショーは騒然となった。しかし、世間がいくら首を傾げようと、樹木希林自身が夫の手を放すことは決してなかった。
「あの人は私の中に存在する、一番深い重荷であり、最高の教訓だった」。彼女は晩年、夫についてそう回想している。どんなに傷つけられようとも相手の純粋さや弱さを見抜き、決して自分自身の被害者意識に逃げ込まない。凄まじいまでの覚悟と人間愛。一見すると歪に見える二人の絆は、お互いの魂の根底で深く結びついており、彼女にとっては自身を鍛錬するための鏡のような存在でもあったのだ。