連載当時、読者の間では「トビの正体は誰なのか」について白熱した議論が交わされていました。原作者・岸本斉史氏によって仕掛けられた伏線は、言語、視覚、そしてアニメの音響設計に至るまで緻密に構築されていたのです。
1. 名前のアナグラムと空間共有の決定打
トビ(TOBI)のアルファベットを並び替え、1文字足すと「OBITO(オビト)」になるという仕掛けは初期から指摘されていましたが、決定的だったのは右目の時空間忍術「神威」の仕様でした。カカシが左目で発動する遠距離型の神威と、トビが右目で発動する自身をすり抜けさせる近距離型の神威。2つの術の行き先が「同一の異空間」であることが判明した瞬間、すべてのピースがカチリと噛み合いました。
2. 高木渉と内田直哉による「二重の声」の罠
アニメ制作陣が仕掛けた最大の欺瞞工作が、声優キャスティングでした。初期のおどけたトビを演じたのは名優・高木渉氏。しかし、イタチの死後に「うちはマダラ」を名乗って威圧的に振る舞い始めた瞬間、本物のうちはマダラ役である内田直哉氏へと声が切り替わったのです。
このキャスト変更により、視聴者は「トビの中身は本当に復活したマダラなのだ」と完全に信じ込まされました。そして仮面が割れ、正体がオビトだと判明した際、青年オビトの真の声を担当したのは、他ならぬ高木渉氏でした。道化のハイトーンボイスから、絶望に満ちた低く冷酷な青年ボイスへと自在にトーンを変える高木氏の怪演は、トビというキャラクターの二面性を完璧に具現化しました。