サックスという楽器は、吹き手の体温や息遣い、そして人生の年輪がダイレクトに音へと変換される。半世紀以上にわたり世界の第一線で鳴らされてきた彼のサックスノートは、年を重ねるごとに磨きがかかり、むしろ余計な力みが削ぎ落とされた至高の美しさに到達している。
ステージ上で彼がサックスを構え、一音目を吹き抜いた瞬間、会場の空気が一変する。それは圧倒的な音圧でねじ伏せるような演奏ではない。聴く者の心にすっと寄り添い、優しく語りかけるような温かみと、どこまでも澄み切った哀愁を帯びたトーンだ。2026年の今日においても、彼の音色が古びるどころか常に新しく響くのは、彼自身が常に「今日の自分」の音を模索し続けているからに他ならない。