あいの風とやま鉄道の経営状況を財務諸表や沿線自治体の報告資料から読み解くと、地方ローカル線とは一線を画す特異な経営構造が見えてきます。同社が慢性的な営業赤字に直面し、公的支援を必要とする最大の理由は、「過疎化による乗客減」だけではありません。
本路線の最大の特徴は、日本海縦貫線として毎日膨大な数のJR貨物列車が走行している点にあります。重量級の貨物列車を高頻度で運行させるためには、強固な複線軌条と高圧電化設備、複雑な信号保安装置を維持し続けなければなりません。JR時代は特急列車の特急料金収入で賄われていたこれらの膨大なインフラ維持管理費が、新幹線開業に伴い三セク鉄道側へ重い固定費としてのしかかっているのです。
隣接するIRいしかわ鉄道との違いにも注目すべきです。IRいしかわ鉄道は金沢都市圏という強固な通勤通学需要を抱え、新幹線開業区間の延伸(大聖寺方面)によってネットワークが石川県全域へ拡大しました。対して、あいの風とやま鉄道は県境間の営業距離が約100kmと極めて長く、中間部に人口密度の低い沿岸エリアを多く抱えています。貨物調整金や国の鉄道軌道近代化設備整備費補助金が投入されているものの、老朽化した橋梁やトンネルの修繕費が重くのしかかる構造的な課題を抱えています。