1968年、まだ日本で本物のフランス菓子を味わうことが難しかった時代に、伝説のシェフであるアンドレ・ルコント氏が第一歩を記した。彼はホテルオークラの初代シェフ・パティシエを辞任後、本場の味覚をそのまま日本へ伝えるべく独立。一切の妥協を許さない素材選びと伝統的な製法を守り抜く姿勢は、日本の製菓業界全体に計り知れない衝撃と影響を与えた。
当時の日本の洋菓子は甘さを抑えたアレンジが主流だった。しかし彼は、フランス古来の重厚で芳醇なレシピをそのまま再現。ネズミの形をした可憐なシュークリーム「スワン」や、洋酒の風味がしっかり効いたババなど、数々の名作パティスリーがこの地で誕生し、多くの文化人や食通を虜にした。