しかし、ブームの熱狂と引き換えに、彼女の日常は急速に侵食されていきました。デビューからわずか数か月後の2009年秋頃から、過熱する取材攻勢と一部ファンの過激な行動が深刻化します。
海女の仕事場である海岸には、早朝から巨大な望遠レンズを構えたカメラマンが陣取り、潜水作業中だけでなく着替えや移動の瞬間までもが無断で撮影される事態が発生しました。さらに、芸能事務所からのタレント転身オファーや写真集出版の打診が殺到し、彼女が本来望んでいた「祖母の背中を追って伝統の海女を継ぐ」という純粋な志は、巨大な商業主義と観光PRのプレッシャーに押しつぶされていきました。
さらにネット上では、彼女のプライベートに関する根拠のないデマや誹謗中傷、過去のプライベート写真の無断転載など、匿名掲示板を中心とした心ない攻撃が激化します。地元関係者の証言によると、大向さんは当時、心身ともに疲弊し切っており、2010年春、ついに海女業からの引退を決断せざるを得なくなりました。
一部で囁かれた「人間関係のトラブル」や「観光協会との対立」といった噂は事実無根であり、実態は「一般人である一人の若い女性に対する、制御不能となったメディアと大衆の過熱取材」が直接の引き金でした。