現地に到着して最初に目に入るのは、外壁を覆う独特の風合いだ。建設直後のぬめり感のある土の質感は姿を変え、微細なクラック(ひび割れ)と、北側の壁面に少しずつ根を張った苔が、独特の表情を形作っている。崩壊どころか、建物全体が土着の樹木のように風景へと溶け込んでいた。
ただし、放置されてこうなったわけではない。施主による毎年の補修作業、漆喰や天然の防水剤を用いたこまめなメンテナンスの賜物だ。土の建築において、雨滴が直撃する庇(ひさし)のない部分や裾野の侵食は避けられない課題。住み手の手入れが途絶えた瞬間に劣化が進む、生き物のような建造物であることが現場の質感から見て取れる。