弥七の魅力を語るうえで欠かせないのが、深川の蕎麦屋「田毎庵(たごとあん)」を切り盛りする妻・霞のお新(かすみのおしん)の存在です。お新自身もかつては凄腕のくノ一であり、弥七とは命のやり取りを経て結ばれた戦友でもあります。江戸に残って情報の中継拠点を守りつつ、時には自ら刃を取って弥七の危機に駆けつける夫婦の絆は、番組における大人のロマンスの象徴でした。
一行のムードメーカーであるうっかり八兵衛との関係にも深いバックボーンが存在します。八兵衛はもともと、弥七が義賊として活動していた頃の下っ端・舎弟でした。弥七を「親分」と呼んで絶対の信頼を寄せ、弥七の口添えによって光圀一行の供として旅に加わることを許された経緯があります。
普段はおどけて失敗ばかりの八兵衛が、弥七の鋭い視線ひとつで居住まいを正す描写には、かつての裏稼業時代から続く確かな上下関係と情愛が滲み出ていました。