このドラマの深みを増しているのが、大沢たかおが演じた小田村伊之助(のちの楫取素彦)の存在感である。松陰の親友であり、長州藩の優秀な官僚として誠実に生きた伊之助は、情熱的で暴走しがちな志士たちと藩の上層部との間で苦悩し続ける。
大沢たかおの重厚かつ温かみのある演技は、群像劇全体のアンカーとして揺るぎない安定感をもたらした。文との静かな信頼関係、そして松陰の遺志を継いで群馬県令として近代日本の礎を築いていく過酷な道のりは、観る者に深い感動を与える。志士たちが去った後も生き残り、理想を現実に変えていく男の生き様は、もう一つの主役級のドラマと言える。