憲法を本当に理解するためには、それが「いつ、誰が、どのような思惑で創り上げたのか」という成立過程の歴史を知ることが欠かせません。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による「押し付け憲法」なのか、それとも日本側の英知が反映された「共作」なのかという議論は、改憲論争の根底にある重要テーマです。
この分野の決定版として名高いのが、古関彰一氏の『日本国憲法の誕生』(中公文庫)です。1945年の敗戦直後、幣原喜重郎内閣の松本烝治が作成した保守的な草案をGHQが拒否し、わずか1週間あまりでマッカーサー草案が起草された舞台裏。そして白洲次郎らの交渉を経て、帝国議会の審議において「芦田修正」と呼ばれる歴史的な文言修正(9条2項冒頭の文言追加)が加えられる過程が、一次史料をもとにスリリングに描き出されています。
誕生のドラマを知ることで、条文の背後にある当時の日本国民の平和への切実な願いと、冷戦前夜の国際政治の力学が生々しく浮かび上がってきます。