2010年春、土曜9時枠の改編情報が駆け巡った際、業界内には一瞬の困惑が走った。藤子不二雄Ⓐの昭和の名作コミック『怪物くん』を、嵐のリーダーである大野智で実写化する。特殊メイクに身を包み、耳が大きくなる怪物を30代手前のトップアイドルが演じるというニュースは、一間違えればコントになりかねない危うさを孕んでいたからだ。
だが、第1話が放送された瞬間、疑念は一瞬で吹き飛んだ。大野が見せたのは、我䊢で生意気、しかし根底に孤独と純粋さを抱えた「怪物太郎」の完全なる立体化だった。CG処理された手足の伸縮演技に頼るのではなく、彼の圧倒的な体幹と緻密な表情筋のコントロールが、画面の中のキャラクターに揺るぎない実体を与えたのだ。喜怒哀楽の激しさと時折見せる静かな哀愁。舞台で長年磨き上げられた大野智という役者の凄みが、ストレートに結実した瞬間だった。