水没した町を小船で進む宗介とポニョ。そこで出会う人々は、異様なほど静けさを保ち、パニックを起こす素振りすら見せない。車椅子で生活していたデイケアサービスセンターの高齢者たちが、水中で自由にはしゃぎ回る姿は、単なる奇跡の描写なのだろうか。
肉体という物質的制約からの解放。それは古今東西の宗教観において「死」や「輪廻転生」の過渡期を想起させる。生者と死者の境目が溶け出し、過去と現在、現世と来世が交錯する世界。古来より語り継がれてきた「黄泉の国」や「三途の川」の渡河を彷彿とさせるこの水没劇は、観客に得体の知れない神聖さと戦慄を同時に与える。
ポニョが抱く純粋ゆえの狂気と、人間世界を飲み込む水の力。作中に散りばめられた幾何学的な記号やトンネルの通過儀礼は、魂が次の生へと移行するプロセスを映像化したものと読み解くことができる。